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世界主要国の電気通信に関する詳細情報 08

8. フランス

 

1.報道内容に対する監視機構と罰則規定等について

 政府・議会及びフランスの電気通信及び放送の規律と監督を行う独立規制機関である視聴覚高等評議会(Conseil Superieur de I'audiovisuel CSA)により、番組の質と多元性確保のための監視及びフランス語・フランス文化の擁護、有害コンテンツからの未成年保護等の監視が行われているほか、番組内容について非常に細かい規制が存在する。以下に一部抜粋して掲載する。

音楽プログラムでは、視聴率の高い時間帯では40%以上がフランス語の楽曲である必要があり、更に半数は新人或いは新作の曲である必要がある

・音楽プログラムを専門とする事業者は、フランス語を題名とする曲の比率を60%以上とし、若手音楽家の放送を目的とする事業者に於し、ては、フランス語を題名とする曲の比率を35%以上とし、うち25%を新人の曲とする必要がある。

プライムタイムに放送する映画或いはテレビ番組は、60%以上が欧州域内での製作である必要があり、また、40%はフランス語で製作されたものである必要がある

・全国向けテレビ放送事業者が放送する自主製作の地方向け番組は聴覚高等評議会(CSA) が認めない限り1日3時間を限度とする(多様性と独立性の確保を目的としていると考えられる)。

・未成年者の身体・精神・道徳的成長を阻害する可能性のある番組は、放送時間の制限や視覚的表示による警告の必要がある。

・人種・性別・宗教等についての差別的内容を含まないよう留意する必要がある。

 

また、質の高いコンテンツ制作を目的として以下の義務付けがある。

 

・全国年間平均視聴人口が2.5%以上の地上ディジタルテレビ放送は、視聴者の多い時間帯は視覚障碍者への対応が義務付けられている。

・放送事業者は年間純資産額の3.2%を国内の番組制作に投資する義務。

・自局で放送する番組は一定割合独立系番組制作会社への外注する義務。

・放送事業者と独立系番組制作会社は互いに資本の15%以上を所有する義務。

 

更に、以下の広告規制がある。

・テレビ放送の広告は原則フランス語に限り、放送時間は地上波・衛星放送は9分、ケーブルテレビ等は12分を上限とする。

アルコール、煙草、宝くじの広告及びサブリミナル広告は禁止

・特定商品の在庫放出等の販売時期や価格の広告は禁止。

 

 これら放送法に違反した放送会社に対する改善の要求や釈明要求から年間総売上高の3%を上限とする制裁金を科す(繰り返す場合は5%が上限となる)ほか、修正放送の要求、当該番組の一時停止、放送免許の期間短縮、放送免許取り消し等の制裁処置がとられる。なお、これらの処置に対する抗告は国務院のみに対して可能であり、聴覚高等評議会(CSA) には強し、権限が与えられている。

 聴覚高等評議会(CSA) の制裁措置に関する実例としては、聴覚高等評議会(CSA) の度々の催告に従わなかったSkyrock (ラジオ放送)に対し、20万ユーロの制裁を科した。Skyrockこの処置を不服とし国務院に反訴したが、国務院は聴覚高等評議会(CSA) の措置を妥当と判断し制裁が確定した。

 

 

2. クロスメディアオーナーシップ等の報道機関の一定地域における情報提供の占有や支配に関する各種規制について

・クロスメディアオーナーシップ等について

 テレビ・ラジオの視聴者数や、新聞の流通量の総量制限を含め、テレビ・ラジオ・新聞社等の報道機関の保有及び兼業等には視聴覚高等評議会(CSA) による厳しい制限がある。以下に主な制限について掲載する。

・全国放送の地上テレビは複数局の許可はされない。但し、地上ディジタルテレビは番組編集がそれぞれ個別企業による場合に限り7件までの許可を得ることができる。

・視聴者数1200万人を超える地域放送の地上テレビ放送を行う報道機関に対し、他地域の地上テレビ放送の許可を得ることはできない。

・地域放送ラジオは潜在的視聴者数のシェアが10%を超える場合は新たな放送局の許可は得られない

・衛星アナログ放送は、ラジオ放送であってもテレビ放送であっても複数の許可を得ることはできない(衛星放送はシステム的に全国放送となるための処置と考えられる)。

・視聴者人口数がテレビ視聴者の場合で400万人、ラジオ視聴者の場合は3000万人に達する地域において、市場、ンェアが20%を超える日刊新聞社は当該地域でテレビ・ラジオ事業を行うことができない。

・地域で発行される日刊新聞社は、同地域においてテレビ・ラジオ事業は許可されない。

 

また、資本所有比率規制も存在する。

・地上テレビ放送で全体視聴率2.5%を超える事業者に対する資本率または議決権所有上限は49%である。

・衛星放送事業者の資本・議決権のいずれか1/3を所有するものは、他の同業事業の資本・議決権のいずれにおいても1/3以上を所有することはできない。

 

 放送事業者と独立系番組制作会社との資本比率の上限も設定されているなど、フランスのクロスメディアオーナーシップの禁止は多岐にわたっている。また、放送事業も公募に対する許可制で、地上波の事業免許は最長10年であり、事業免許は審査を経て更新される。

 

・外資規制について

 コミュニケーションの自由に関する1986年9月30日法律第86-1067号第40条により、政府が署名した国際公約を除き、外国籍の者或いは資本の過半が外国籍所有の会社、及び経営者が外国籍の会社は、地上放送事業者の資本又は議決権の20%以上を直接・間接の如何を問わず所有できない。

 

 

3. 電波オークション制度について

 フランスの電波オークション制度では、電波利用の促進が着実に行われるように、入札金額やカバレッジ以外の条件を組み入れた割り当て選定制度と、ガパレッジ条件と入札金額のみの一般的なオークション制度の双方が行われている

 

・オークション実施例

 ・2011年の割り当て選定制度による2.6GHz帯の総帯域140MHzの割り当て選定では、4通信事業者により総額936millionEUR (約1240億円)で落札された。割り当て選定条件は、支払金額と、MVNOへのネットワーク開放計画の有無で、落札者は免許取得後4年間で25%、8年間で60%、12年間で75%の人口カバレッジの達成のネットワーク拡張義務がある。

・2011年の割り当て選定制度による800MHzの帯総帯域60MHzの割り当て選定では、3通信事業者により総額2,639,087,005EUR(約3500億円)で落札された。割り当て選定条件は、支払金額と、MVNOへのネットワーク開放計画の有無、免許取得後15年で人口カバレッジ95%が可能かどうかで、免許取得後12年で人口カバレッジ98%、15年で99.6%、及び人口過疎地域(フランス全土に対する人口18%・面積63%の地域)に対し免許取得後5年で40%、10年で90%のカバレッジの達成義務がある。

・2015年のオークション制度による700MHz帯の総帯域60MHzのオークションでは、3通信事業者により総計2,798,976,324EUR(約3700億円)で落札された。700MHz帯の利用許可期間は20年で、落札者には2030年末までに人口カバレッジ99.6%、基幹道路におけるカバレッジ100%、鉄道網に対するカバレッジ90%の達成義務がある。

 

 

4. 電波使用料等について

 CSAの管理の元、電子通信・郵便規制機関(Electronic Communications and Postal Regulatory Authority ARCEP)により毎年電波使用料(Redevancesde mise a disposition de frequences)及び電波管理料(Redevancesde gestion de frequences)が科せられる。

 ※フランスの電波使用料(周波数の使用に関わる料金)は、移動通信体(携帯電話等)に対しては、オークション帯域はオークション収入に加えて売上高の1%が利用料として徴収され、非オークション帯域は1kHz帯域あたりの利用料に加え売上高の1%が利用料として徴収される。移動通信体以外に関しては、標準的な周波数管理料と電波使用料が科せられる。

 ※料金は、周波数帯域による係数と地理的要因及びカバレッジの広さ等の係数により算出され、周波数帯域に関しては移動通信体で用いられるGHz帯が高い係数となっている。また、カバレッジは広さに応じて係数が大きくなるものの、比例関係にあるわけではない。

 

 電波使用料と電波管理料の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.legifrance.gouv.fr/affichTcxte.do?cidTcxte=JORFTEXT0000000619224&catcgorieLien=cid

 

5. その他資料等

・監査機関等

 インターネット等も含む電気通信全般と郵便に関する規制や調整、運用面での問題に対する対応等は、独立行政機関である電気通信・郵便規制機関が行う。電気通信や放送の内容(コンテンツ)に関する規制は視聴覚高等評議会(CSA) が行う。

 

(※リンク先が調査時(2017~2018年)から変更になっている場合は、各機関のHPルートに接続します)

世界主要国の通信放送等に関する調査報告書 17