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世界主要国の電気通信に関する詳細情報 34

34.オーストリア

 

1.報道内容に対する監視機構と罰則規定等について

 オーストリア憲法により報道の自由が保障されており、メディアに関する検閲は原則として行われていない。また、1981年メディア法により、放送事業者やジャーナリストの独立が保障されている。しかし、メディアに対し保護と独立を保証するだけではなく、メディア法により個人のプライバシー及び誹謗中傷、名誉毀損等のメディアによる個人に対する侵害からの保護など様々な義務が課せられている

 また、放送に関してはメディア法以外にも様々な法により細かく規定されているが、それぞれの法規が独立しているため類似対象に関する規制を複数の法規により規定する重層的且つ非常に複雑な構造を持つ。それら国内法に加えEU加盟国として域内共通のルールである視聴覚メディアサービス指令(AVMSD)等の国際規定も適用されるため、全体像の把握はこれらについても加味する必要がある。

 オーストリア独自の法規の主なものを以下に示す。

 

・2003年電気通信法(Telekommunikationsgesetz 2003 (TKG2003))

 

・オーストリア放送に関する連邦法((ORF法)Bundesgesetz über den Österreichischen  Rundfunk (ORF-Gesetz))

 

・オーディオビジュアルメディアサービスに関する連邦法((AMD 法)Bundesgesetz über  audiovisuelle Mediendienste (Audiovisuelle Mediendienste-Gesetz AMD-G))

 

・民間ラジオ放送のための条項を制定する連邦法(PrR法)Bundesgesetz, mit dem  Bestimmungen für privaten Hörfunk erlassen werden (Privatradiogesetz -PrR-G)

 

・コミュニケーションオーストリア(Kommunikationsbehörde  Austria, abgekürzt auch  KommAustria(KommAustria) )の設立に関する連邦法((KommAustria法)Bundesgesetz  über die Einrichtung einer Kommunikationsbehörde Austria ("KommAustria“)

(KommAustria -Gesetz -KOG))

 

・放送費の徴収に関する連邦法((RG法)Bundesgesetz betreffend die Einhebung von  Rundfunkgebühren (Rundfunkgebührengesetz -RGG))

 

・排他的テレビジョン放送権の行使に関する連邦法((テレビ独占権法)Bundesgesetz über die  Ausübung exklusiver Fernsehübertragungsrechte (Fernseh-Exklusivrechtegesetz -FERG))

 

・報道等ジャーナリズムメディアの1981年6月12日連邦法((メディア法)Bundesgesetz vom 12. Juni 1981 über die Presse und andere publizistische Medien (Mediengesetz -MedienG))

 

・広告オーダー、定期媒体のメディア所有者への資金調達等メディア協力の透明性に関する連邦法((メディア協力および、フ。ロモーション透明性法)Bundesgesetz über die Transparenz von  Medienkooperationen sowie von Werbeaufträgen und Förderungen an Medieninhaber  eines periodischen Mediums (Medienkooperations-und -förderungs-Transparenzgesetz,MedKF-TG))

 

・プレスの推進に関する連邦法((プレスプロモーション法)Bundesgesetz über die Förderung  der Presse (Presseförderungsgesetz 2004 -PresseFG 2004))

 

・電気通信法を改正する連邦法((2003年改正電気通信法)Bundesgesetz,mit dem ein  Telekommunikationsgesetz erlassen wird (Telekommunikationsgesetz 2003 -TKG 2003))

 

 

 これらの法規は基本的に放送局や報道機関・各種メディアサービス等に対する規範を法的に規定するものであり、規制の実務自体は後述するオーストリア放送通信規制局(Rundfunkund  Telekom Regulierungs GmbH ((RTR))により実施されている。

 また、オーストリア放送通信規制局とは別にオーストリアのジャーナリストやメディアグループにより構成され、ジャーナリズムに必要な自由と責任、即ち真実性と正確性を保証するための報道の自由を追求し、報道の義務を果たすことを目的とした自主規制機関であるオーストリア報道評議会(ÖsterreichischePresserat)があり、この評議会により評議会構成員が従うべき報道倫理を策定したオーストリア報道倫理規定(Ehrenkodex  für die österreichische Presse) があり、構成員はこれに従う必要があり、違反した場合はオーストリア報道協議会内部規定により処理される。

 オーストリア報道倫理規定では、報道の自由の原則ニュースの誠実さと正確さの希求虚偽内容に対する迅速な訂正の公表と訂正事実と外部意見や解説等の明確な区別及び第三者意見の有効性の確認、編集の独立とそれを保証するための内容に関連した対象からの個人的利益等の享受からの独立個人及び団体の人格保護と名誉棄損や誹誘中傷の禁止個人が危険に晒される可能性のある報道の禁止公人も含めたプライパシーの保護と尊重、青少年や児童の保護、年齢・障碍・性別・民族・国家・宗教・思想等による差別の禁止、基本的な方針としての公益の優先等と、裁判手続き中の内容に関する報道の禁止等が規定されている。また、この報道倫理規定に対する違反だけでなく市民等からの報道に関する苦情等についても、その妥当性や正当性を判断し、必要に応じて処理されるほか、これらの活動状況は統計的に公表されると共に重要な事象については報道評議会により詳細が報告されている。但し、これら一連の違反・苦情処理はあくまで自主規制に基づいている点には注意が必要である。

 公的機関としては、2003年電気通信法何KG2003) の第112条に規定されるオーストリア放送通信規制局(Rundfunkund Telekom Regulierungs-GmbH (RTR-GmbH)) がある。オーストリア放送通信規制局(RTR-GmbH)は、オーストリア通信局(Kommunikationsbehörde  Austria  (KommAustria)) ,同第116条に規定されるテレコム管理委員会(Telekom-Control-Kommission  (TKK)) および郵便管理委員会(Post-Control-Kommission(PCK)) の運営支援を行う2つの部門(メディアおよび電気通信および郵便事業部門)で構成され、それぞれ法律・技術・経済その他多様な分野の専門家から構成され、放送・公共通信ネットワークを含めた電気通信分野のインフラストラクチャー全般の管理と規制及び技術支援等を行っている。

 オーストリア放送通信規制局(RTR-GmbH)の具体的な規制内容は、オーストリア放送に関する連邦法(ORF法)に規定されている。同第3条によりオーストリア放送は、主要なすべての政治的、社会的、経済的、スポーツ的問題の包括的な情報公開と、民主的なすべての問題に対する理解の促進と欧州の歴史と統合及びオーストリアのアイデンティティ、並びにオーストリアの芸術・文化・化学の理解と促進、多様な文化の尊重と全年齢層に対する配慮、障碍者・家族・子ども・男女の平等な権利に対する適切な配慮法的に認められている教会や宗教団体の尊重学校や教育の普及と促進、健康・自然・環境及び消費者保護と持続可能性の原則の理解と促進及び情報の提供、スポーツ活動の促進地域的アイデンティティの促進、経済への理解と促進、欧州の安全保障政策と包括的国防問題の理解の促進障碍者の社会的及び人道的活動の適切な促進と労働市場に対する意識の向上、これらすべてに基づくプログラムの枠組みの中での業務遂行を行う必要がある。また、同第3条5項により、客観性の原則を尊重した上での事実分析や独自コメントを行うと共に、意見の多様性を考慮し、批判的意見の提示と伝達を行う必要がある。また、ジャーナリズムの独立を保証し、行動規範の遵守及びその適合性が定期的に見直されるものとさまた、同第4条aにより放送内容の品質保証体制について定められ、外部の様々な領域の専門資格を持つ独立した専門家を招鴨する必要がある。テレビ・ラジオ・オンラインコンテンツ用の品質保証システムは、情報・文化・科学の範囲で高品質である必要がある。また視聴者アンケートや独立した市場調査機関等の連続的かっ定性的な調査を交えた上で、最低でも年1回の定期的な適正査察を行うと共に、査察機関であるオーストリア放送通信規制局(RTR-GmbH)は、同第36条及び連邦法・オーストリア通信局(Kommunikationsbehörde Austria (KommAustria)) の設立に関する連邦法((KommAustria法)に基づき一般視聴者等からの苦情や、侵害に対し6週間以内に申し立てを行い、6か月以内に調査報告を行うと共に、これらを含め総合的に品質保証体制を構築する必要がある。

 スポーツ及び情報・文化プログラムに関しては特別の配慮がなされており、スポーツ部門に関し、国民にスポーツに関する包括的な情報を提供すると共に、スポーツ活動に対し積極的関心を持たせ、地域のスポーツ活動の促進やスポーツのルール等への理解の促進、ドーピング等に関する危険性の情報提供等を行うことが同第4条bで規定されている。

 情報・文化プログラムに関しては同第4条Cで規定されており、情報・討論・ドキュメンタリー・文化イベント・教育等のプログラムは洗練された内容で、高品質である必要があり、情報文化プログラムの初回放送は事前に予備審査が必要である。

 なお、スポーツ及び情報・文化プログラムに関してはテレビ広告の割合は20%を超えてはならないことが定められている。

 これらを含むオーストラリア放送公社の全てのプログラムは同第10条に定められる様々なコンテンツ原則を遵守する必要がある。具体的には、人間の尊厳及び他者の基本的人権の尊重を基本とし、人種・性別・年齢・障碍・宗教・国籍に基づく憎悪の禁止と、情報は包括的で独立し、公平で客観的でなければならず、特にニュースとレポートは全て真実性と出自の明確化分析及びメッセージとコメントが明確に分離可能であるかどうかを慎重に確認する必要がある。更に、意見の多様性と個人の基本的人権とプライパシーを尊重する必要がある。また、未成年視聴者に対する配慮として、物理的・精神的・道徳的な発達を損なう可能性のあるコンテンツ・ポルノ・不当な暴力等を視聴しないように放送時間その他暗号化等の選択可能な配慮、を行い提供する必要があると共に、これらの内容を含む放送で暗号化されていないものは、事前に音声及び映像等により表示を行う必要がある。

 商業放送にも様々な規制があり、同第10条の規定に、性的指向に基づく差別、健康や安全に危険をさらすような行動及び環境の保護に重大な脅威をもたらす行動の促進や不法行為、消費者または消費者の利益を誤解させ害する事などが同第13条で禁止されている。また、煙草及び煙草製品、処方薬、医療機器、治療薬の処方を目的とした商用放送は禁止されており、更に、医療関係の情報は真実で検証可能である必要がある。

 酒類については細かい規定があり、未成年を対象とせず、過剰な飲酒の奨励の禁止と、飲酒が身体的能力を向上させることや自動車運転と飲酒には関連が無いといったような誤った情報の禁止飲酒の社会的・性的な成功を促進するという印象を与えることの禁止飲酒の治療的、覚醒、鎮静等の効果の示唆の禁止禁酒や節制の否定的表現の禁止酒類を肯定的な特徴として強調してはならない等の規定がある。

 未成年者保護については、前記の飲酒以外に様々な規定が設けられており、未成年者に商品やサービスの購入やレンタル等を直接的に働きかけることや、広告された商品やサービスを購入するように親や第三者に納得させるようなことを直接的に働きかけること、未成年者が親、教師、親戚等に持つ特別な信頼を利用することの禁止などが規定されている。

 また、食品や飲料等については、栄養または生理的効果について、脂肪・トランス脂肪酸・塩化ナトリウム・糖類の過剰な摂取を推薦してはならない規定がある。

 広告は放送コンテンツと容易に識別可能である必要があり、具体的に映像や音声その他で明確に分離されている必要がある。また、子供向けプログラムの直前及び直後に未成年者向け広告を挿入することは許可されないほか、スポンサーシップについても放送の編集責任と独立性に影響を与えてはならない

 なお、同法に違反し行政処分となった場合、最大58,000EUR (約750万円)の罰金刑が科せられる。

 メディアに関するもう一つの規制法がオーディオビジュアルメディアサービスに関する連邦法(AMD法)である。AMD法は、テレビ・ラジオ等の電波メディアと、オンデマンド放送やインターネット放送等の広く電子通信ネットワークも含めた総合的な視聴覚メディアサービスを対象とし、それらの更なる発展の促進を目的としている。

 包括的な視聴覚メディア全体に対する禁止事項と、ラジオ・テレビ・オンデマンド放送等の其々に対する個別の禁止事項に分けられており、包括的内容としては同第30条に及び第31条により、視聴覚メディアサービスは人間の尊厳と基本的人権の尊重、人種・性別・宗教・障碍・国籍に基づく憎悪の禁止視聴覚障碍者が容易にアクセス可能となるような配慮が必要である。また、不正な広告の禁止と、性別・人種・民族・国籍・宗教。信念・障碍・年齢・性的指向に基づく差別を含むかそれらを促進する事、健康や安全を危険にさらす行為の促進、環境保護に重大な脅威をもたらす行動の促進、違法行為の促進、消費者の利益を害する行為等の禁止がKommAustria法と同様に定められている。また、酒類に関しても同様であり、酒類の効果を肯定的に表現する事や消費の促進等を同第35条で全面的に禁止しており、未成年保護や食品・薬物等についての扱いも同第36条で規定されている。

 番組のスポンサーに関する規定も同様で、同第37条により番組の先頭または終わりにスポンサーのマークや名称、ロゴ等を明確に表示する必要がある。

 より自由度が高いオンデマンド視聴覚メディアに関しては、同第39条により未成年の物理的・精神的・道徳的な発達を損なう可能性のある視聴覚メディアサービスに対し、アクセス制御等の防護対策を行う必要がある。

 テレビ放送に関する未成年者保護は、肉体的・精神的・道徳的発達、特にポルノや暴力的表現が含まれではならず、精神的・道徳的発達に影響を及ぼす可能性のあるテレビ放送は放映時間の選択や暗号化等のアクセスコントロールを行うほか、暗号化処置が行われていない場合は、音声及び表示でその旨を告知する必要がある。

 広告については同第43~46条で規定されており、広告やテレビショッピングは番組本編と容易に識別可能でなければならないほか、スポーツイベント放送を除き通常の番組では番組と番組の聞にまとまって放送する必要があり、30分を超える番組に関しては途中で中断し広告を入れることができる。また、ニュースと時事プログラムはスポンサードしてはならない。なお、広告は放送の20%を超えてはならない規定がある。

 放送事業者には、同法第47条によりすべての番組の記録を少なくとも10週間は保存する義務が課せられるほか、要請があれば規制当局に対し必要な記録を提出する必要がある。また、各放送事業者は放映時間の開始および終了時、番組中の一定時間毎に放送事業者名及び住所、編集責任者をテレビ番組で表示する必要がある

 同法で規定されている項目に違反した場合、同第64条により違反内容により4,000EUR (約52万円)までの罰金から、8,000EUR(104万円)、重度の行政犯罪の場合は40,000EUR(約520万円)が処せられる。

 なお、ラジオ放送に関してはプライベートラジオ法((Privatradiogesetz(PrR法))による規定もあり、同第16条により放送内容は基本的人権を尊重し、民族的根拠による憎しみや、ポルノ、暴力、宗教、国籍、障碍等に対する差別的なコンテンツが禁止されているほか、情報提供番組では、ジャーナリズムの原則に則り、事実と情報の出所を明確にする必要がある。

 広告については同第四条の規定により1日あたり172分を超えず、且つ放送時間の20%以下である必要があり、酒類と煙草の広告は禁止されているほか、広告は番組とは明確に識別可能であり、広告と容易に識別できる必要があるほか、消費者の利益を欺くものであってはならず、ステルス広告も禁止されている。

 ラジオ放送に於いても同第22条の規定により、他のメディアと同様にすべての放送内容を最低10週間分は記録する義務があり、要請があれば規制当局に対し必要な記録を提出する必要がある。

 ラジオ放送に関する行政処分については同第27条で規定され、行税犯罪の内容により最大7260EUR (約100万円) の罰金が科せられる。

 

 オーストリア報道評議会(Österreichische  Presserat)の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.presserat.at/

 

 オーストリア放送通信規制局(Rundfunkund Telekom Regulierungs GmbH ((RTR)) の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/RTR

 

 オーストリア報道倫理規定(Ehrenkodex  für die österreichische Presse) の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.presserat.at/rte/upload/pdfs/grundsaetze_fuer_die_publizistische_arbeit_ehrenkodex_fuer_die_oesterreichische_presse_idf_vom_02.12.2013.pdf

 

 2003年電気通信法(Telekommunikationsgesetz 2003(TKG2003)) の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/TKG2003

 

 オーストリア放送に関する連邦法((ORF法)Bundesgesetz über den Österreichischen Rundfunk (ORF-Gesetz)) の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.jusline.at/gesetz/orf-g

 

 オーディオビジュアルメディアサービスに関する連邦法((AMD法)Bundesgesetz über audiovisuelle Mediendienste (Audiovisuelle Mediendienste-Gesetz -AMD-G)) の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/m/AMDG

 

 広告オーダー、定期媒体のメディア所有者への資金調達等メディア協力の透明性に関する連邦法((メディア協力およびプロモーション透明性法)Bundesgesetz über die Transparenz  von Medienkooperationen sowie von Werbeaufträgen und Förderungen an Medieninhaber  eines periodischen Mediums (Medienkooperations-und -förderungs-Transparenzgesetz,(MedKF-TG)) の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/m/MedKFTG

 

 プライベートラジオ法((Privatradiogesetz(PrR法))の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.ris.bka.gv.at/GeltendeFassung.wxe?Abfrage=Bundesnormen&Gesetzesnummer=20001215

 

 

2. クロスメディアオーナーシップ等の報道機関の一定地域における情報提供の占有や支配に関する各種規制について

 オーディオビジュアルメディアサービスに関する連邦法(AMD法)第11条により、個人またはパートナーシップはライセンスの対象となるカバレッジエリアが3つ以上重ならない限り複数の地上ディジタルテレビジョン免許を保持することができる規定がある。

 また、テレビ番組の提供は放送の独立性を確保する上で、30%以上の全国カバレッジをしている地上波ラジオや、30%以上の地域カバレッジをしている日刊新聞及び30%以上の地域カバレッジをしている週刊新聞、人口の30%以上のカバレッジをしているケーブルネットワークの運営から除外される。同様に30%以上の全国カバレッジをしている地上波ラジオや、30%以上の地域カバレッジをしている日刊新聞及び30%以上の地域カバレッジをしている週刊新聞、人口の30%以上のカバレッジをしているケーブルネットワークの所有者は地上波テレビジョンの運営から除外される

 オーディオビジュアルメディアサービスに関する連邦法(AMD法)とは別に、ラジオ放送のオーナーシップについてはプライベートラジオ法((Privatradiogesetz(PrR法))第9条に規定があり、同第7条により地上波ラジオはカバレッジエリアが技術的に避けられないスピルオーバーを除いて重複していなければ複数の所持が可能である。

 

・外資規制等について

 オーディオビジュアルメディアサービスに関する連邦法(AMD法)第3条により、メディアサービスプロバイダーは、本社がオーストリアで且つ編集意思決定がオーストリアでなされているか、本社がオーストリアで且つ編集意思決定が欧州経済地域内のあること、本社が欧州経済地域条約域内且つオーストリアで編集意思決定行われ且つスタッフの大半がオーストリアで活動している場合は、オーストリアのメディアサービスパイダーとされ、更に第10条により、メディアサービスプロパイダーまたはそのメンバーはオーストリア市民・法人またはドイツに所在する会社のパートナーシップある必要があると規定されている。また、同第10条4項に、メディアサービスプロパイダーは海外拠点とする法人や企業その他の所有する株式が49%を超えてはならないと規定されている。

 同様にラジオ放送についてはプライベートラジオ法((Privatradiogesetz(PrR法))第7条により、ラジオ放送局はオーストリア市民または法人またはドイツ商業法のパートナーシップであり、株式の49%まではこれら以外の所有が許されている。

 

 

3. 電波オークション制度について

 オーストリアの電波帯域は、2003年電気通信法何KG2003)第52条に基づき、国際調和、技術開発、伝送媒体における周波数使用号完成を考慮、した上で連邦交通省大臣により策定された周波数使用計画に基づき使用される。実際の割り当て業務は同52条3項の規定により、欧州連合を含む国際的な周波数計画と将来の技術開発等を加味して行われるほか、オーストリア2013年周波数利用条例(Frequenznutzungsverordnung2013) 第4条及び周波数帯域配分計画(附属書1)に従う。

 割り当てには様々な制限や規制等が設けられているが、それらの制限には正当な理由が必要であり、その理由は公表される必要性が定められていると共に、同52条4項の規定により割り当て自体も適当な間隔で見直されることが定められており、これらを根拠として電波オークションが行われる。

 具体的な利用計画の策定手法については同第53条及び同54条に規定され、有害な干渉を避けサービスの品質を確保するための無線周波数の一般的利益及び効率的な使用の確保を目的とし、周波数利用計画及び周波数配分計画に基づき透明で客観的な手順と技術及びサービスの中立性を確保した上で客観的・透明性・無差別的かつ適切な基準での配分が行われる。但し、中立性には有害な干渉を避け効率的な利用を行うことと、電磁波による健康被害の回避と可能な限り共有し効率的に使用するための一定の基準が設けられており、特にラジオ及びテレビ放送については文化的言語的多様性及びメディアの多元性を促進することが求められている。

 オークションについての規定は同第55条に定められており、オーストリア放送通信規制局(RTR-GmbH)により経済的効率性に従い公平・構成・無差別な手続きの原則に従って行われる

 なお、同第58条により周波数の割り当ては特定の周波数の所有権を付与するものではなく、使用する権利のみである。また、同第55条による周波数割当所有者は、同第59条を根拠に周波数使用料を支払う必要があるほか、実際のオークション業務は2003年電気通信法何KG2003)第116条の定めるテレコム制御委員会(Telekom-Control-Kommission (TKK))により同第117条を根拠に行われている。

 また、オーストリアの電波取引はオークションに限らず、オーストリア放送通信規制局(RTR-GmbH) の事前承認を必要とするものの、同第56条の規定により既に割り当てられた周波数使用権の所有権変更が可能である。所有権の変更に際し、オーストリア放送通信規制局(RTR-GmbH) に対し行われた所有権変更申請は一般に公表され、所定の手続きを経て所有権の移転が行われる。

 オーストリアでは比較的高頻度で所有権の移転が行われており、2010年代だけでも14回実施されているが、完全に自由な移転が認められるわけではなく、メディアの集中を防ぎ多様性を確保するためカルテルに対する連邦法及びその他の競争制限法(独占禁止法2005) (Bundesgesetz  gegen Kartelle und andere Wettbewerbsbeschränkungen (Kartellgesetz 2005 -KartG 2005))による規定の範圏外である必要がある。具体的には同第8条の規定により、メディア法に規定されるメディア会社またはメディアサービス会社、メディアサポート会社及び前記3業種会社に直接的或いは間接的に25%以上投資している企業の合併には同第11条~13条に規定された登録と審査が必要となり、同第4条に規定される支配的地位が生じる恐れがある場合や生じる場合は合併が禁止される。但し、市場優位の欠点を上回る競争条件や国際的競争力の維持または向上に必要であり経済的に企業の競争力が正当化される場合は許可される場合がある。

 

 オーストリア所有権の移転取引についての詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_trading

 

 カルテルに対する連邦法及びその他の競争制限法(Bundesgesetz gegen Kartelle und andere  

 Wettbewerbsbeschränkungen (Kartellgesetz 2005 -KartG 2005))の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.ris.bka.gv.at/GeltendeFassung/Bundesnormen/20004174/KartG%202005% 2c%20Fassung%20vom%2010.12.2018.pdf

 

・オークション等実施例

・1996年1月に実施された900MHz帯の2×7.8MHz幅の電波オークションは、2通信事業者により290,691,336.67EUR(約380億円) で落札された。

 

・1997年8月に実施された1800MHz帯の2×16.8MHz幅の電波オークションは、1通信事業者により167,147,518.58EUR(約220億円) で落札された。

 

・1999年3月に実施された1800MHz帯の2×14.6MHz幅の電波オークションは、1通信事業者により98,108,326.13EUR(約130億円) で落札された。

 

・2000年3月に実施された400MHz帯の2×1MHz幅の電波オークションは、1通信事業者により4,832,743.47EUR (約6億3000万円) で落札された。

 

・2000年11月に実施された2.1GHz帯の2×60MHz及び1×25MHz幅の電波オークションは、6通信事業者により831,595,241.38EUR(約1080億円) で落札された。

 

・2001年2月に実施された26GHz帯の2×392MHz幅の電波オークションは、2通信事業者により1,351,714.72EUR(約1億8000万円) で落札された。

 

・2001年5月に実施された1800MHz帯の2×21.2MHz幅の電波オークションは、3通信事業者により69,911,266.47EUR (約91億円) で落札された。

 

・2002年7月に実施された400MHz帯の2×1MHz幅の電波オークションは、有効な入札が行われず未落札に終わった。

 

・2002年10月に実施された900MHz帯の2X2.6MHz及び1800MHz帯の2×5.0MHz幅の電波オークションは、2通信事業者により14,800,000.00EUR(約20億円) で落札された。

 

・2004年4月に実施された3.5GHz帯の2×84MHz幅の電波オークションは、4通信事業者により464,000.00EUR(約6050万円) で落札された。

 

・2004年8月に実施された900MHz帯の2×12MHz幅の電波オークションは、3通信事業者により968,000.00EUR(約1億3000万円) で落札された。

 

・2006年4月に実施された450MHz帯の2×4.44MHz幅の電波オークションは、2通信事業者により5,974,900.00EUR(約7億8000万円) で落札された。

 

・2006年3月に実施された26GHz帯の2×84MHz幅の電波オークションは、1通信事業者により349,000.00EUR (約4600万円) で落札された。

 

・2008年9月に実施された900MHz帯の2×0.8MHz幅の電波オークションは、1通信事業者により501,500.00EUR(約6600万円) で落札された。

 

・2008年10月に実施された450MHz帯の2×4.44MHz幅の電波オークションは、有効な入札が行われず未落札に終わった。

 

・2008年12月に実施された3.5GHz帯の地域別2×21/28MHz幅の電波オークションは、3通信事業者により181,000.00EUR(約2400万円) で落札された。

 

・2009年8月に実施された3.5GHz帯の地域別2×21/28MHz幅の電波オークションは、4通信事業者により140,860.00EUR(約1900万円) で落札された。

 

・2010年10月に実施された2.6GHz帯の1×50MHz及び2×70MHz幅の電波オークションは、4通信事業者により39,527,109.00EUR(約52億円) で落札された。

 

・2013年8月に実施された450MHz帯の2×4.44MHz幅の電波オークションは、2通信事業者により357,000.00EUR(約4700万円) で落札された。

 

・2013年10月に実施された800MHz帯の2×20MHz及び2×10MHz幅, 900MHz帯の4×15MHz及ひ、2×5MHz幅, 1800MHz帯の2×35MHz及び4×20MHz幅の電波オークションは、3通信事業者により2,014,461,467.00EUR(約2650億円) で落札された。

 

・2013年12月に実施された3.5GHz帯の2×21/28MHz幅の電波オークションは、1通信事業者により16,000.00EUR(約210万円) で落札された。

 

・2014年6月に実施された3.5GHz帯の2X28MHz幅の電波オークションは、1通信事業者により6,300.00EUR(約85万円) で落札された。

 

・なお、2019年には3.4GHz帯及び3.8GHz帯の合計390MHz幅の電波オークションが予定されているほか、2020年には700MHz帯,1500MHz帯及び2.1GHz帯の2×90MHz十80MHzのオークションが予定されている。

 

 1996年1月の900MHz帯の帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_900MHz

 

 1997年8月の1800MHz帯帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_1800MHz_1997

 

 1999年3月の1800MHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_1800MHz_1999

 

 2000年3月の400MHz帯帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_400MHz_2000

 

 2000年11月の2.1GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_2100MHz_2000

 

 2001年2月の26GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_26GHz_2001

 

 2001年5月の1800MHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_1800MHz_2001

 

 2002年7月の400MHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_400MHz_2002

 

 2002年10月の900MHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_900MHz_2002

 

 2004年4月の3.5GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_3500MHz_2004

 

 2004年8月の900MHz帯帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_900MHz_2004

 

 2006年4月の450MHz帯帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_450MHz_2006

 

 2006年3月の26GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_26GHz_2007

 

 2008年9月の900MHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_900MHz_2008

 

 2008年10月の450MHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_450MHz_2008

 

 2008年12月の3.5GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_3500MHz_2008

 

 2009年8月の3.5GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_3500MHz_2009

 

 2010年10月の2.6GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_2600MHz

 

 2013年8月の450MHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_450MHz_2013

 

 2013年10月の800MHz帯,900MHz帯,1800MHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/multibandauktion

 

 2013年12月の3.5GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_3500MHz_2013

 

 2014年6月の3.5GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_3500MHz_2014

 

 2019年実施予定の3.4GHz帯及び3.8GHz帯の電波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/5G-Auction

 

 2020年実施予定の700MHz帯,1500MHz帯及び2.1GHz帯の波オークション詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ5G_2020

 

 テレコム制御委員会(Telekom-Control-Kommission (TKK)) の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/TKK

 

 オーストリア2013年周波数利用条例(Frequenznutzungsverordnung2013) の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.ris.bka.gv.at/GeltendeFassung.wxe?Abfrage=Bundesnormen&Gesetzesnummer=20008807&FassungVom=2014-11-10

 

 オーストリア2013年周波数利用条例(Frequenznut zungsverordn ung 2013)附属書1 周波数帯域配分計画の詳細については以下のWebサイトを参照

 https://www.ris.bka.gv.at/Dokumente/Bundesnormen/NOR40161599/II_63_2014_Anlage_1.pdf

 

 終了済の周波数割当手順の概要一覧については以下のWebサイトを参照

 https://www.rtr.at/de/tk/FRQ_trading

 

 

4. 電波使用料等について

 2003年電気通信法(TKG2003)第59条の規定により、同第55条に基づく周波数割り当ての保有者は周波数使用料を支払う義務を負う。

 なお、放送免許はオーディオビジュアルメディアサービスに関する連邦法(AMD法)第5条により10年毎に更新され、同様にプライベートラジオ法((Privatradiogesetz(PrR法)) 第3条によりラジオ放送についても10年毎に更新される。

 

 

5. その他資料等

・監査機関等

 放送規制や放送免許管理、紛争解決及びディジタル放送推進と、周波数管理については放送通信規制局(Rundfunk  und Telekom Regulierungs GmbH ((RTR))が行い、電波オークション等の実務管理等はテレコム制御委員会(Telekom-Control-Kommission (TKK))により行われる。報道機関に対する監督と規制はオーストリア通信局(Kommunikationsbehörde  Austria  (KommAustria) )により行われ、これらとは別に報道機関の自主規制団体であるオーストリア報道評議会(Österreichische  Presserat) が存在する。

 

(※リンク先が調査時(2017~2018年)から変更になっている場合は、各機関のHPルートに接続します)

世界主要国の通信放送等に関する調査報告書 43