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2. それぞれの調査項目についての概略

  以下に、調査項目についての世界的な傾向についての概略を示す。

 

4. 電波使用料等について

  

 国により様々な名称が用いられているが、ある一定の周波数帯において一定地域に於ける占有的使用に対する対価が電波使用料である。電波使用料は、各国の事情にあわせ様々な形態で料率が計算され徴収が行われているが、これらは基本的に電波使用者である電気通信事業者対し電波監理と運営に関わる経費を総合し、電波管理費用として公平に実費負担させるという受益者負担の原則により設定されている。

 電波管理費用の定義は各国により若干異なるが、基本的に行政による管理徴収その他の事務手数料と、電波の利用状況調査及び輯鞍その他様々な技術・実務的問題に対し実際の対処にかかる諸費用、及び主に電波帯の有効利用と伝送技術の向上によるデータ転送効率の向上等の、電気通信技術の発展のためにかかる様々な費用等を総合したものである。

 このように、電波使用料は原則管理費名目で徴収されているが、一定地域での電波帯域の占有の権利、或いは占有を行う許認可(免許)等としての側面を持つため、周波数や帯域、カバレッジ地域の広さ、経済状況、公共への貢献度、その他各国諸事情に合わせ様々な係数を用いて算出され、多くの国で1年ごとに金額が再計算され徴収が行われている。また、原則として金額は周波数と帯域幅に依存するため、商法放送で、あっても公共性も併せ持っと考えられている公共放送(不特定多数を対象とする放送)については、元々使用帯域がそれほど広くないことや、移動通信体が使用する帯域に比べ参入業者や競合業者が殆ど無く、電波使用状況の逼迫度があまり高くない事等も併せ、多くの国に於いて商業放送事業者に対する電波使用料は、移動通信体業者に対する電波使用料に比べ総額がかなり低廉な傾向がみられる。但し、放送内容の審査と監督料等の業務を行う政府系独立団体等に対し、組織維持のための金銭負担を課している国や電波使用料(帯域占有料)と別に放送免許等の別名目の金銭負担を課している国もあり、電波使用料のみでの単純比較はできないほか、広くインターネットやケーブルテレビジョンも含め、放送や発表内容の審査等を行う団体の維持費を免許等で公平に負担させている場合もある。また、電気通信事業者及びテレビ放送・ラジオ放送等の事業者には、免許要件としてカバレッジ義務や国営放送等の再送信義務その他様々な条件が課せられている場合もあり、この点に於いても単純な比較はできない。

 

 なお、電波オークション制度が導入されている国では基本的に電波オークションの売却益も電波使用料に組み込まれており、それら電波オークション実施国では電波監理業務の財源の多くを電波オークションに依存する傾向にある。従って、電波オークションの大半が移動通信体事業者に対して行われている現状を鑑みると、全世界な傾向として電波使用料全体から見た割合を比較すると移動通信体事業者の費用負担率は、公共放送の費用負担率に対して顕著に高い傾向がみられる。

 また、テレビ放送、特に半強制的に集められる受信料で運営されている公営放送(或いは準公営放送)と一般商用放送で放送免許等の制度や体系が異なる国も多く、公営放送等では、運営費を受信料で賄う国、或いは受信料に加え一部広告料で賄う国、政府から一定の補助金がある国、公営の放送認可団体等の収益を運営費の一部に充当する国等様々であり、これらと我が国の日本放送協会(NHK)及び各種民開放送局との放送免許、或いは電波使用料等との単純な比較はできない。また、実質上公営(国営)放送のみの国もあり、更に単純な比較を困難なものとしている。

 特に、受信料が強制の国では、受信料を単純に公営放送運営のみに使用しているわけではなく、その点でも一定の電波帯域を使用する放送局がどの程度の負担をしているか、という点での単純比較はほとんど意味を持たない。また、それが全国放送であるのか、地域放送であるのか等により異なる場合や、更に情報の多様化の確保のため他地域の放送内容の転送を義務付けられている場合等もあるため、これらの点に於いてもより比較を困難なものとしている。

 なお、リニア・ノンリニアに関わらず、一定規模の利用者(視聴者)がいるインターネットプロパイダやメディアサービスについても一定の制限や内容についての許認可が必要な国もあり、それらの管理費用としてプロパイダやメディアサービス業者に一定の負担を課す場合等もあるため、包括的な取扱いを行うことは極めて困難である。

 いずれにせよ、ほぼすべての国で電波使用料自体は放送局の企業規模に対して比較的安価であり、そこに放送免許料やメディア管理料その他各国の事情や運営状況に合わせ様々な料金が科せられ、或いは様々な理由で一部免除、場合によっては政府の補助金が受けられるのが世界の放送局の状況である。また、視聴者が支払う受信料は世界的には放送受信ライセンス料、或いはテレビライセンス料等と呼ばれており、公営放送のみならず、公共放送において、ライセンス料のみで運営する国、ライセンス料及び広告収益で運営する国、ライセンス料・広告・及び政府補助金での運営を行う国、更にライセンス料等が一切課せられておらず、政府補助金と広告収益で運営する国、広告収益のみで運営する園、政府補助金のみで運営する国等様々である。

 なお、使用料等の日本円換算については当時のレートではなく調査時点(2018年)での平均的なレートでの換算金額としている点で注意が必要である。

 

 

世界主要国の通信放送等に関する調査報告書 6