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世界主要国の 監視機構と罰則抜粋32

32.デンマーク

 

1.報道内容に対する監視機構と罰則規定等について

 報道機関に対する監視及び監督の権限は文化省(Kulturministeriet) が有している。監視と監督等の実務に関しては、文化省の下位組織である文化庁(Kulturstyrelsen) と、ラジオとテレビに関する法及び同改正法(Bekendtgørelse  af lov om radio-og fjernsynsvirksomhed LBK nr 255 af 20/03/2014) 第39条~第44条に規定される文化庁管轄の独立規制機関であるラジオ・テレビ委員会(Radio-og tv-nævnet (Radio and Television Board RTB)) により実施されている。

 報道機関は、ラジオ・テレビ委員会(RTB) の指示と、ラジオとテレビに関する法、ラジオ・テレビを含むメディア全般に対する規制や罰則を定めたメディア責任法(Bekendtgørelse  af  medieansvarsloven) に従う義務を負い、同第46条の規定により欧州視覚メディアサービス指令(AVMSD) にも従う必要がある。

 メディアや報道機関に対する苦情の処理はプレス協議会(Pressenævnet) で行い、プレス協議会(Pressenævnet) でのメディアに関する苦情の意思決定は、取締役会であるプレスボードにて実施される。詳細は下記メディア責任法を参照。

 なおデンマークの放送事業は、デンマーク公共放送(Danish Broadcasting Corporation DR)と地域TV放送等があり、ラジオとテレビに関する法による規定が若干異なる。

 

ラジオとテレビに関する法及び同改正法(Bekendtgørelse af lov om radio- og  fjernsynsvirksomhed LBK nr 255 af 20/03/2014) について

 ラジオとテレビに関する法は、ラジオ放送及びテレビ放送等のブロードバンド電波放送と、同第2条に規定される共同アンテナシステム及びケーブルテレビ、インターネット等の電子通信ネットワークを用いたオンデマンド視聴覚番組サービス等に対し様々な許可と規制を行うための法律である。同第3条により、地上波ディジタル放送はラジオ・テレビ委員会(RTB) の許可を得てのみ行うことが可能である。

 また、ラジオ・テレビ委員会(RTB) により、同第4条を根拠に放送事業者の違反行為及び繰り返される違反等に対し、同第93条の定めに応じて罰金及びライセンス条件の無効、ライセンスの撤回、放送免許停止及び刑事責任が課せられる。

 放送内容に関しては、公営サービス会社はニュース・情報・教育・芸術・エンターテインメント等の幅広い番組の提供とその品質の維持と多様性が必要であり、番組では情報と表現の自由の確保に留意すると共に公正性と公平性に重点を置く必要がある。また、国民が重要な社会情報と議論に自由にアクセスできるようにし、デンマーク語及びデンマーク文化を重視し、芸術と文化を振興し、文化的利益の多様性を反映した番組を提供する義務を負うことが同第10条に定められているほか、デンマーク公共放送(DR) の公的奉仕義務は同第12条(後述)に、地域TV放送の公的奉仕義務は同第31条に規定されており、第31条の規定により地域TV放送は、地域との協調と、情報・文化・娯楽に関するニュース番組の制作義務があり、公共サービス義務の履行についてはデンマーク公共放送(DR) と同様に文化大臣との間の公共サービス契約に基づき、公共サービス契約に関する年次報告書の提出義務があるが、同第35条の規定により、デンマーク公共放送(DR) の運営資金は、徴収されたライセンス料や、番組の販売、給付金、補助金、営業利益等により賄われる。

 同第48条により、文化大臣は番組の内容に関する規則や、欧州作成番組の推進に関する規則、番組の利用可能性に関する規則等の番組活動に関する規則を定められ、未成年者の保護は番組活動に関する規則に内包し、更に、人種・性別・宗教・国籍・性的趣向等に基づく憎悪及び扇動等の禁止等に関するルールの策定が可能である。

 また、同法にはデンマーク公共放送(DR) に関する特別の規定も用意されている。同第四条により、デンマーク公共放送(DR) は全国民に対し公共サービス活動を行う義務を有する。

 公共サービス活動義務の履行はデンマーク公共放送(DR) と文化大臣との聞の公共サービス契約に基づくものであり、デンマーク公共放送(DR) は、その公共サービス活動を確実なものとするために、公共サービス契約の遵守に関する声明を毎年公表する義務を負う。

 デンマーク公共放送(DR) は同第15条に規定された独立した公的機関であるため、番組放送事業及びインターネットを利用した公共サービス活動による広告収入を得ることができない。従って、前記の様にライセンス料の拠出と、番組の販売や助成金、給付金、配当等により運営されるほか、運営委員は同第16条により文化大臣により任命され、取締役会はメディア・文化・経営等の専門家により構成されることが規定されている。

 広告については、同第72条の規定により放送に於いて番組本体と広告は容易に識別可能である必要があり、同第80条により番組スポンサーは、番組開始時または終了時、及び開始時と終了時の双方でスポンサーの製品やサービス、ロゴや名称等により識別可能である必要があり、同第81条によりスポンサー付番組では、スポンサーは放送事業者やメディア提供者の番組編集方針に影響を与えてはならないことが規定されている。また、同第82条によりスポンサー付番組では、番組内容中に於いてスポンサーや商品及びサービスの宣伝をしてはならないほか、同第83条により煙草製品及び喫煙関連製品等の製造・販売を主事業とする企業はスポンサーになることができない場合がある。

 放送における広告放送時間は、同第75条により放送1時間当たり12分未満である必要がある。広告内容に関する規制は同第76条により規定され、煙草及び煙草関連商品、労働組合、宗教運動、政党、政治活動、選挙候補者等の広告の放送は禁止されているほか、医薬品及び健康関連商品の広告は、医薬品法及びヘルスケアマーケティング法の規定に従い行う必要がある。

 広告やスポンサーシップに関する苦情は同第78条に規定されており、視聴者からの苦情は、放送が実施されてから4週間以内にラジオ・テレビ委員会(RTB) が受け取る必要があるほか、メディア責任法第35条により、広告の内容に対する苦情については放送法の規則が適用されることが規定されている。

 同第87条によりデンマーク公共放送(DR) と地域テレビには放送後3か月間の全ての番組を保存する義務があり、広告を含む番組全体の問題の処理に対し必要に応じてそれらの保存された録画内容を提出する義務がある。

 違反に対する罰則については、同第50条により、ラジオ・テレビ委員会(RTB)の取締役会により審議され、同第45条・同第47条等の規定に従い、同法に違反した場合や、違反行為が繰り返される場合には、当該放送局に対し放送免許の一時停止や中断、撤回が可能であるほか、同第93条より罰金及びライセンス条件の無効、ライセンスの撤回、放送免許停止及び刑事責任が課せられるほか、同第94条により、故意または重大な過失に対し最大1年6ヶ月の刑期増大がなされる場合がある。

 

・メディア責任法(Bekendtgのrelseaf medieansvarsloven) について

 報道機関や出版社等によるすべてのメディアコンテンツはメディア責任法に従う必要がある。

 メディア責任法の対象となる具体的なメディアコンテンツは、ラジオ放送及びテレビ放送等のブロードバンド電波放送、共同アンテナシステム及びケーブルテレビ、インターネット等の電子通信ネットワークを用いたオンデマンド視聴覚番組サービス等の、テレビとラジオに関する法の対象となるテレビ放送及びラジオ放送に加え、これら以外のマルチメディアコンテンツ及び圏内の定期刊行物等の印刷物を含むマスメディアや、それらと同等のニュースサービスの性質を有するすべてのものを対象としている。

 同第3条に於いて定期刊行物の執筆内容に関する編集責任を明確にしており、同第4条により要求に応じ編集責任者の情報を提供する義務を負う。同様に同第5条及び同第6条によりラジオ及びテレビ放送に於いて放送責任者(編集者)の責任の範囲とその所在を明確にし、要求に応じ責任者の情報を提供する義務を負う。また、同第7条により編集者は全ての放送内容(番組)を6ヶ月間保管する義務を負うほか、番組の問題により提出義務を受けた場合は保存期間の6ヶ月を超えていても、その問題がプレス協議会(Pressenævnet) または裁判所によって処理されている間は保管する義務を負う。

 同第9条により定期刊行物に対し、執筆者、編集者等に刑事責任が課せられる場合があることを明示し、同第10条により記事の責任を明白にし法律の一般規則に従い罰金等の法的責任を課すことが可能である。

 同第11条により編集者の責任は、違反行為が故意または過失で編集者に帰せられない場合であっても適用され、同第12条により他者の名義の記事や意見であっても編集者により再現された記事や意見の内容には編集者にも責任があり、この点に於いても責任は同第11条と同様に故意・過失の区別なく適用される

 編集者に対し同第11条~13条に従い責任を問うことができない場合は、第15条により出版社が編集者の誤記や不正確な内容等についての著作権的な責任を負い、この違反行為についても故意・過失の区別なく適用される。

 ラジオ及びテレビ放送については、同第16条により、編集者及び放送事業者、テキスト原稿作成者、放送で意見を述べる者等が刑事責任を有するほか、同第17条により著者が匿名性を主張した場合を除き、放送される内容についての著者はその放送に同意した場合コンテンツに対し責任を有するほか、直接報道で意見を主張する場合は、同第20条の規定により編集者は陳述の内容に責任を負う。

 マスコミ全体に対する規定としては、同第25条~28条に示されており、同第25条にマスコミによる犯罪では最大6年以上の懲役刑となる可能性を示し、同第26条では違反行為による罰金及び費用についてはメディア会社が責任を負うものと規定され、同第27条では広告を掲載したものは内容を管理する責任があり、その編集者が開示義務を果たさない場合は編集者の故意・過失に起因してないものであっても広告内容についての責任を負うこととなる。

 同第34条によりマスコミの行動と報道内容は、善良なプレス倫理に従うものとし、違反に対する苦情は発表後12週間以内にマスメディア自体またはプレス協議会(Pressenævnet) に行い、マスメディアはその決定を12週間以内にプレス協議会(Pressenævnet) に提出する

 マスコミに対する不服申し立ては、同第39条により原則として遅延無し且つ合理的な方法で、提示される必要がある。また、同第36条により、不服申し立てはその情報の正確さが疑わしい場合を除き容認される必要があり、同第37条により編集者の責任において通知を公表する義務がある

 メディア責任法に関する処罰等については、同第63条及び第64条により規定され、違反の程度に合わせ罰金や、第64条の規定により、マスメディアが、裁判所により刑罰や賠償、及び有罪判決を受けた場合に於いて、その判決内容についての迅速な公表を行う義務を怠った場合等には最高で4ヶ月の懲役となる。

 なお、報道機関に対する苦情を管轄するプレス協議会(Pressenævnet) については同第41条~同第62条に定められている。

 

 ラジオとテレビに関する法律266号(Bekendtgørelse  af lov om radio-og fjernsynsvirksomhed  LBK nr 266 af 20/03/2014) の詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.retsinformation.dk/Forms/R0710.aspx?id=161625

 

 メディア責任法(Bekendtgørelse  af medieansvarsloven) の詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.retsinformation.dk/eli/lta/2014/914

  

 

2. 監査機関と管理体制について

・文化省(Kulturministeriet)

芸術・文化・文化遺産・教師区全般と、法曹分野に関する政策立案及び法案全般の作成を行う政府機関。

 ・文化庁(Kulturstyrelsen) 

文化省の一機関で、芸術・文化遺産と放送及びメディアの活性化と国際連携の強化を推進する。放送分野に関する政策立案は文化省が実施し、放送及びメディアの振興は文化庁が実施する。

 

・商務省(Erhvervsstyrelsen) 

市場競争促進等の商業分野全般の振興を主業務とするが、電気通信分野に於いては規制全般と周波数割当等を実施する政府機関。

 

・ディジタル庁(Digitaliseringsstyrelsen)

財務省の一機関で、ICT戦略や電子政府等を含むディジタル化施策を推進する。

 

・ラジオ・テレビ委員会(Radio-og tv-nævnet (Radio and Television Board RTB))

文化大臣や裁判官協会等により任命された法律・メディア・文化等の専門家により構成された、放送事業者への免許交付及び規制・監督等を行う独立規制機関。報道機関に対する監督と規制を行う。

 

プレス協議会(Pressenævnet)

メディア責任法に従い、報道機関に対する苦情の処理を行う独立機関。メディアや報道機関に対する苦情の処理を行う。

 

・メディア責任法(Bekendtgørelse  af  medieansvarsloven) 

ラジオ・テレビを含むメディア全般に対する規制や罰則を定めた法律。

 

・欧州経済地域(European  Economic Area EEA) 協定の放送指令に基づく規制

EU加盟28ヶ国及びスイスを除く欧州自由貿易連合(European Free Trade Association EFTA) 加盟国は、放送事業者も放送・視聴覚サービス法第2条9の規定により欧州経済地域(EEA) 協定の放送指令に基づく規制を遵守する義務を有する。欧州経済地域(EEA) による規制は、国内法や国内規制等により妨げられない。

 

 参考資料:デンマーク王国 通信レポート(総務省)

 http://www.soumu.go.jp/g-ict/country/denmark/pdf/045.pdf

 

(※リンク先が調査時(2017~2018年)から変更になっている場合は、各機関のHPルートに接続します)

世界主要国の公共放送を中心とした監視機構と罰則抜粋 33