自国民ファーストと差別問題

自国民ファーストの定義

国際法上の意味

「国家は、自国民の安全・福祉・利益を、他国民より優先して守る権利と義務を持つ」という国家主権原則に基づく考え方。

  (例:社会保障、雇用、医療、教育、

    国防などで、自国民を優先すること)

 

国際法的根拠

 ・“自国民ファースト”を認めた国連憲章の条文

 国連憲章 第1条第2項

 「諸国民の平等な権利及び自決の原則の尊重」

  → 各国が自国民を優先保護することは「自決権」の一部

 

  国連憲章 第55条

 「各国民の自決と主権の平等」

  → 内政上、自国民の福祉を第一に考えるのは国家の自由

 

 ∴ 「諸国民の自決権の尊重」および「国家主権の平等」

各国が自国民を優先的に保護することは、国家主権の行使として認められる。

 

 国際人権規約B規約自由権規約

  第12条、社会権規約第2条

社会保障などで「自国民優先」が許容される。

 

 

 ・“自国民ファースト”を認めた人種差別撤廃条約の条文

 人種差別撤廃条約(CERD) 第1条2項

「締約国は、自国民と外国人を区別することを禁止するものではない」

→ 明確に「国籍に基づく区別」は人種差別に当たらないと規定。

 

 (例:社会保障や投票権を自国民だけに与えるのは合法)

 

∴ 国際法に照らせば、日本にだけ「日本人ファースト」を認めないのは、「日本人への人種差別」に当たる。

 

小学生にも分かるように

①『自国民ファースト』って何?

 「自分の家族をまず大事にする」のと同じ。

国も「まず自分の国の人をしっかり守る」という考え方。

② 外国人をいじめるのと、どこがちがうの?

 OKなこと

・日本の学校は日本の子どもが先に入れる。

・日本のお金は、まず日本の人のために使う。

・日本のルールは、日本人が決める。

 ダメなこと

・外国人だからっていじめたり、理由もなく追い出したりするのはダメ。

・肌の色や生まれた場所で、理由もなく悪い扱いをするのもダメ。

「日本人と同じ扱いにしない」「外国人のルールに日本人を合わせない」ことを「差別だ」と言うのは「日本人への人種差別」になるのでダメ。

③ 国連のルールでは何て言っているの?

 国連憲章

「それぞれの国は、自分の国の人を大事にしていい

 人種差別をなくすルール

自国の人と外国の人を区別してもいいよ。人種や肌の色で差別しちゃダメだけど、国籍で区別するのはOKだよ」

諸外国の「自国民ファースト」

1. アメリカ(United States)

① 政治・法律レベル

 ・「America First」政策(トランプ政権)

  輸入品への高関税(対中国関税など)

  移民制限

(イスラム圏7カ国入国禁止、メキシコ国境の壁建設)

 ・Buy American Act(1933年)

政府調達は原則としてアメリカ製品優先

 ・雇用

公務員や防衛産業への外国人雇用は大きく制限

 ・市民権義務(Selective Service System)

18~25歳男性は戦時徴兵登録が義務。

② 判例

外国人の社会保障受給は州ごとに制限可能
(例:マタル事件に関連する判例で外国人の権利制限を合憲と判断)

 

2. イギリス(United Kingdom)

① 政治・法律レベル

 ・Brexit(EU離脱)

労働市場を英国民優先にするため、EU市民の自由移動権を廃止。

 ・Immigration Act(移民法)

永住権取得には英語能力・収入基準を強化。

 ・NHS(国民保健サービス)

外国人は緊急以外の治療で有料。英国民が無料で優先。

② 政策

 ・公的住宅(council housing)

英国民・永住者が優先。

 

3. フランス(France)

① 政治・法律レベル

 ・Code du travail(労働法典)

公務員の多くはフランス・EU市民に限定。

 ・社会保障

外国人は一定の滞在期間・納税履歴が必要、フランス国民が優先。

 ・「Préférence nationale」議論

保守政党(国民連合)が提唱、「住宅や雇用はフランス人優先」とする政策が地方自治体で一部採用。

 

4. 中国(People's Republic of China)

① 政治・法律レベル

 ・就業制限

外国人は政府許可が必要、特に国防・重要産業は中国人限定

 ・土地所有権

外国人は土地を所有できず、賃貸のみ(50~70年の土地使用権)。

 ・国家安全法

外国人企業の活動を厳格に制限、中国企業を優先。

 ・戸籍制度(戸口本)

社会保障・教育・医療は中国国民が優先、外国人は対象外

 

5. 韓国(Republic of Korea)

① 政治・法律レベル

 ・国家公務員法

公務員は原則韓国国籍が必須。

 ・生活保護(国民基礎生活保障法)

外国人は原則対象外、例外的に結婚移民や難民に限定支給。

 ・兵役義務

韓国国民男性は徴兵制、外国人にはなし。

 ・住宅・教育

公営住宅は韓国国民が優先。

日本人ファーストと法律・判例

 

日本における『日本人ファースト』の法的根拠

 ・日本国憲法 第14条法の下の平等

「すべて国民は…平等」

「国民」と規定しており、外国人は完全な平等の対象外とされる場合がある。

 

 ・日本国憲法 第25条生存権

「すべて国民は…健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」

生存権は「国民」に保障され、外国人には憲法上の保障は及ばない(行政裁量で生活保護が支給される場合あり)。

 

 ・日本国憲法 第15条公務員の選定罷免

「公務員を選定し、及びこれを罷免する権利は、国民固有の権利」

選挙権・被選挙権は日本国民に限定

 

 ・公職選挙法

日本国籍がなければ選挙権・被選挙権を持てない

 

 ・生活保護法

1条は「国民の最低限度の生活」を目的とし、外国人は法律上の対象外

 

 ・国家公務員法・地方公務員法

重要職は日本国籍を要件とする「国籍条項」が存在。

 

『日本人ファースト』に基づく判例

 ・外国人への生活保護資格否定

最高裁平成26年(2014年)7月18日判決(朝日訴訟類似事件)

中国籍の女性が生活保護停止処分の取り消しを求めたが、

「生活保護法は外国人を権利主体とするものではない」と明言。

→ 外国人への生活保護は「行政の裁量」であり、権利として保障されない

 

 ・国籍条項の合憲性

最高裁昭和60年4月25日判決(東京都教職員国籍条項事件)

教員採用で日本国籍を要求する条項は「合理的理由があり合憲」と判断。

公権力を行使する職は日本人限定が合理的

 

 ・選挙権・被選挙権

最高裁平成7年2月28日判決(永住外国人地方参政権訴訟)

選挙権は国民固有の権利であり、外国人には憲法上保障されない」と明確化。

 

日本国内の『日本人ファースト』の実例

 国籍条項

国家公務員、警察官、自衛官などは日本国籍必須。

 生活保護

外国人への支給はあくまで「行政の温情措置」であり、権利ではない。

 選挙:国政・地方選挙とも日本国籍が必要。

 

対比:アメリカの市民権取得と義務

 帰化宣誓(Oath of Allegiance)

「アメリカ合衆国を支持し、他国への忠誠を捨て、合衆国憲法と法律を守る」ことを誓う。

 義務:陪審員の義務,兵役登録,税金納付義務

→ 「市民になるなら、その国に忠誠を誓い、義務を果たす」という明確な「自国民ファースト」思想

 (例:男性18~25歳はSelective Service Systemに登録)

 

★ 小学生にも分かるように

① 『日本人ファースト』ってなに?

日本の国のルールでは、「まず日本人を守る」という決まりがあるよ。

たとえば、お金がなくて困った人を助ける生活保護は、日本人が優先なんだ。

 

② どうして外国の人は同じじゃないの?

日本は日本人のための国だから、外国の人は「助けてもらえるかどうか」は市役所が決めるんだ。

警察官や国のお仕事も、日本人だけができるよ。

外国の人は、その人の国で助けてもらえるから、日本にだけ「日本人ファーストはダメ」って言うのは、「日本人への差別」になるんだよ。

 

③ どんな決まりがあるの?

選挙は日本人しかできない。

生活保護は日本人が優先。

国の仕事(警察・自衛隊など)は日本人だけ。

 

④ アメリカはどうしてるの?

外国の人が「アメリカ人になりたい!」と言ったら、

「アメリカを一番に大事にします」って誓わないといけないんだよ。

男の人は18歳になると、戦争があったとき国を守る準備もしないといけないんだ。


『自国民ファースト』と「外国人排斥」「人種差別」との違い

 

概念

内容 国際法上の評価

自国民 

ファースト

自国民の安全や生活を他国民より優先する。職業・社会保障などで自国民が優遇されるのは当然とする考え方。 合法:国際法・人権条約でも国家の権利として認められる。

外国人排斥

(排外主義)

外国人を理由なく追放・嫌がらせ・暴力を加えるなど、外国人を不当に排除する行為。 違法になる場合あり:人権侵害、難民条約違反となる場合がある。
人種差別 肌の色、人種、民族、出身国など「変えられない属性」を理由に不利な扱いをすること。 違法:「人種差別撤廃条約」で明確に禁止されている。

『自国民ファースト』に関するフェイクニュース(偽情報・誤情報)