6.制度設計・実務的注意点/リスクマネジメント

制度設計・実務的注意点/リスクマネジメント

提案を実施に移すにあたって、以下のような注意点・リスク・ガバナンス要件を整理しておきます。

 

 • 新規参入優遇・競争導入は、既存放送局の経営・雇用・地域メディアとのバランスを崩さないよう配慮する必要があります。あまり急激な変革は“地域格差悪化”“地方メディア弱体化”につながる恐れがあります。

 • 罰則強化・監督機構の権限強化は、表現の自由・報道自主性を過度に抑制してしまう逆効果にもなり得ます。運用透明性・救済手続き・報道機関の自主ガバナンスと併せて設計することが望ましいです。

 • 外国勢力排除制度は、企業活動の自由・外資参入ルール・国際投資条約等との兼ね合いがあり、恣意的運用・差別的制限とならないよう慎重な基準設定が必要です。

 • オークション制度・電波利用料の市場化は、参入コストの高騰を招き、逆に新規参入障壁となるリスクもあります。制度設計時には参入障壁を下げ、むしろ多様な主体が参画しやすい条件を検討すべきです。

 • 監督機関・第三者機関の独立性確保には、予算・人事・報告義務・監査制度などの制度設計が不可欠です。また、運用実績に基づく定期的な見直しが重要です。

 • デジタル時代のメディア環境を念頭に置き、テレビ・ラジオだけでなく、ネット配信・動画プラットフォーム・SNS等に関する制度との整合性を図る必要があります。

 


7.結語

結語

 本解説では、請願書の趣旨である「国民の知る権利を守る」「言論の自由を確保する」「報道機関への第三国の介入を阻止する」「メディア自由化(参入促進・競争導入)を進める」という提案を、法制度的・国際的視点から整理しました。

制度的改革を通じて、報道の多様性・競争性・独立性・公共性を実質的に強化することは、現代の情報環境・グローバル化・デジタル化の進展において、極めて重要です。特に、国家の安全保障・情報安全保障・国際的な影響力競争が激化する中、報道・放送制度が脆弱なチャネルとして機能してしまわないよう、参入制度・監督制度・透明性・説明責任を含めた制度設計が不可欠です。

 請願書に掲げられた提案は、こうした文脈において十分に法理的根拠を持つものであり、今後、立法・制度設計・実務運用のフェーズにおいて、実効性を発揮するための詳細な議論・制度設計が望まれ、一般社団法人 国民の知る権利を守る自由報道協会は放送業界と利害関係のない第三者として制度設計に携わる準備があります。