請願書が掲げる「報道機関への第三国の介入阻止」「国民の知る権利を守る」という観点から、以下の論点を整理します。
民主主義社会において、国民には「自らの政治的判断・社会的選択を行うために必要な情報を得る権利(知る権利)」があります。報道機関は、その情報を収集・分析・発信する役割を負っており、言論の自由/報道の自由はその責務を支える制度的基盤です。
したがって、報道機関が複数存在し、競争的・多元的に機能することが、知る権利の実効的担保に不可欠です。寡占的メディア構造や、新規参入排除状態では、情報の獲得源が限定され、「知る権利」の実効性が損なわれるおそれがあります。請願書が「全国放送できる報道機関の新規参入」を認め、競争を導入すべきとする提案は、この観点から理論的に整合しています。
報道機関が、資本・役員・番組内容・情報源などを通じて、第三国(特に国益を対立する国・または領土的野心を持つ国)から影響・介入を受けると、以下のようなリスクがあります:
•番組内容・報道方針が、当該第三国の戦略・宣伝・情報操作に利用されうる。
•国の安全保障・外交政策・情報安全保障の観点から、報道の偏向・切り取り・不報(沈黙)などが生じ、国内の政策的意思決定を歪める可能性。
•視聴者・国民に対して、「知るべき情報」が隠蔽・歪曲されるとともに、情報受信者の選択肢・判断力が損なわれる。
•メディアへの信頼が揺らぎ、放送インフラ全体の公平性・独立性・公共性が毀損される。
このような観点から、請願書が「第三国からのメディア操作の排除を法律に明記」「管理職に国籍条項を適用」「電波利用権のオークション等で参入時点での審査を導入」とする提案には、合理的な根拠があります。
(A)参入・免許制度における審査・制限
電波利用・全国放送免許を付与する段階において、株主・関係役員・資本関係・出資者・経営実態等を審査し、「外国政府・外国勢力からの影響を受けうる構成」や「領土的野心を持つ第三国の関係法人」がある場合には、参入を制限または条件付とする制度を検討できます。
この制度を導入することで、報道機関の独立性・安全保障的健全性を参入時点から担保することが可能です。
(B)オークション制度・電波利用料制度の改正
請願書提案のように、「電波利用権の自由競争入札(オークション)」「電波利用料・免許料の市場化」「入札制限・罰則付与(悪質違反時の増額・制限)」「新規参入促進」の制度変更は、競争原理を導入することで、既存寡占構造を打破し、報道機関の多様化・参入拡大を実質的に可能にします。
(C)番組内容・報道監督・罰則制度の強化
報道機関が重大な虚偽・捏造報道を行った場合、現状の放送法では「公平・中立」義務や「編集の自主責任」が求められますが、罰則として「免許取消」「停波」「罰金」等を運用する事例は限定的であり、監督機関の運用実績・透明性も批判されています。
報道の信頼性確保・国民の知る権利の担保という観点から、重大な虚偽・隠蔽報道については、放送法4条・174条等の罰則的運用の明確化・強化、あるいは報道機関に対して民事的責任(例えば請願書にあるような「製造物責任法(PL法)適用」)を検討する論理的根拠が存在します。
(D)監督・第三者機関の設置・独立性の確保
報道・放送制度における監督機関(例えば免許・電波監視・番組内容検証)を政府から距離を取った独立第三者機関とすることで、政府圧力・行政恣意性・政権交代時の影響排除を図る必要があります。国際的に「放送監督機関の政府からの独立性」は報道自由の重要指標とされており、我が国でもその改善が求められています。
(E)情報インフラ・ネットメディア制度の整備
テレビ・ラジオ以外にインターネット・SNS・動画プラットフォーム等が情報の主要手段となりつつあるなか、放送法・電波三法(放送法・電波法・有線電気通信法)だけでは十分にカバーできない新たなメディア環境において、SNS等に対して「公共的責任」「サービス提供義務(公共的インフラ義務)」「透明性・説明責任」等を課す制度改正が検討されるべきです。請願書が指す「SNS事業者に電報・電話並のサービス提供義務を課す」という発想は、この潮流に即しています。
(F)外国出資・影響力の報告義務・透明化
報道機関・放送事業者に対して、株主構成・経営支配構造・資金源・役員の国籍・関係する外国政府・勢力関係などを定期的に開示・報告させ、重大な変更があった場合には免許取消・出資制限・監査強化等の制度を設けることで、第三国影響による歪みを未然に防ぐことができます。
(A)国際標準としての放送独立・監督機関の政府からの距離
国際的には、報道・放送を政府・政治から独立して機能させるため、「放送監督機関」の独立性が重視されます。我が国でも、例えば「放送は、法律の定める場合を除いて、…いかなる他の者の干渉を受けてはならない。」という放送法第3条の文言があります。
しかし実務上、政府(総務省)が免許取消・監督権限を有しており、監督機関の実質的中立性が疑問視されています。
(B)メディア集中・クロスオーナーシップ規制
欧米では新聞・放送・インターネットメディア(クロスプラットフォーム)において、同一資本による影響力集中を防ぐ規制が存在します。これにより、多様性・競争性・独立性を確保しています。請願書の「クロスオーナーシップ制限・禁止」の提案は、まさにこの国際潮流を参照したものです。
(C)外国の影響力規制・セキュリティ規制強化
国家安全保障・情報安全保障の観点から、各国でメディアに対する外国政府・外国資本の影響力規制が進んでいます。報道機関を通じた情報操作・世論誘導リスクを軽減するため、外国資本規制・経営関与規制・情報源開示義務・免許制度での外国勢力排除基準といった制度設計がなされています。こうした国際動向を参考に、我が国でも「領土的野心を持つ第三国」等の影響排除制度を導入する論理的根拠があります。
(D)報道のデジタル化・競争促進
放送という装置産業的発想から、ネット・ストリーミング・動画配信へとメディア環境が変化するなか、メディア規制も従来型テレビ・ラジオ中心から「プラットフォームの多様化・競争の促進・情報受信者の選択肢拡大」へシフトしています。請願書の「全国放送できる新規参入を認める」「自由競争入札・オークション制度」も、こうした変化を先取りした制度設計と言えます。
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