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2. それぞれの調査項目についての概略

  以下に、調査項目についての世界的な傾向についての概略を示す。

 

2. クロスメディアオーナーシップ等の報道機関の一定地域における情報提供の占有や支配に関する各種規制について

 

 多くの国や地域に於いて、一定地域における報道機関に対じ情報提供の占有や支配的状況を禁止する何らかの規制が存在している。報道機関による情報提供手段の占有や支配的状況は、情報の多様化を阻害すると共に、多くの国で憲法により保障されている国民の広く知る権利を阻害する要因となるほか、情報の制限はそのまま当該地域での情報統制につながるため民主主義の根幹を揺るがしかねないこと等が問題となるため、これらの障害排除を根拠として各国で様々な規制が行われている。

 一方、これらの各種規制は自由市場の形成に対し障害となる点や、規制により健全な競争が阻害された結果は、情報の質の低下や電気通信技術発展の遅滞といった負の要因をもたらすため、規制による多様化促進と支配構造の阻害と、自由市場と競争による電気通信技術の発展のどちらを優先するかという点に於いて各国の事情により様々な対応がなされている。

 すなわち、いずれの国に於いても情報の多様性の確保と知る権利の保障、それらを確保するための独占禁止法やそれに類する各種規制法及び国家保安の維持を目的とする各種法制に対し、自由市場の確保と公平な競争等を保証する法制のバランスをどの位置に置くかによりそれぞれの政策が決定されている。

 なお、EU域内においては共通の市場開放ルールがあるため、EU諸国それぞれの国内事情の無制限な反映は難しく、少なくともEU加盟諸国同士における制限はかなり緩いほか、基本的に規制緩和の方向が執られている。また、近年情報の発信や受信の手段としてインターネットとそれを利用した各種メディアサービスを始め、様々な情報機器を活用した電波によるリニア放送以外の情報発信・受信手段の多様化が進んだ結果、欧米を中心とした各種メディアの重要性や依存度及び情報源としての占有度等の研究調査により既存の報道機関の重要度に低下傾向がみられており、それら研究結果を反映し、仮にテレビやラジオ、新聞といった既存の報道機関が独占されていたとしてもインターネット等による情報伝達があるため情報の独占にはならないという考え方が欧米を中心に強まっている。この、インターネット技術による既存のメディアの地位低下という現象もクロスメディアオーナーシップに対する規制緩和政策の一要因となっていると考えられる。

 これら様々な要因により大筋では世界的にクロスメディアオーナーシップに対し規制緩和を行う方向に進んでいるが、規制緩和政策を執る国であっても、多様性の保護や新規勢力の保護育成及び弱小勢力の保護の観点からメディア市場の完全な自由化を実施している国はそれほど多くない。実際の政策としては、諸事情を勘案し自由市場形成に障害とならない程度に規制を抑えつつも何らかの制限が設定されている場合が多くみられる。また、国家安全保障上の要因から多くの国で外国資本に対するメディア規制や通信業界参入規制が行われており、それらについても全体的には緩和される方向ではあるものの、未だ規制を行っている国も少なくないのが現状である。

 全世界的傾向としては、インターネット利用が増大する今日にあっても既存のメディアの情報伝達力と影響力は大きく、国民の知る自由の維持と情報の多様性維持のため極端な独占に対しては一定の制限を設けている、といった状況である。

 

 

 

世界主要国の通信放送等に関する調査報告書 4