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2. それぞれの調査項目についての概略

  以下に、調査項目についての世界的な傾向についての概略を示す。

 

3. 電波オークション制度について

 

 

 我が国に於いて漸く導入の議論が始まっているが、先進国を中心として多くの国々ではすでに電波オークション制度が導入されており、実際に多くの周波数帯がオークションにより取引されており、これらによる売り上げが各種電波管理費用として政府財源に組み込まれている。また、電波オークションが導入されている国は、基本的に各種電波管理費用の大部分を電波オークションによる売り上げで賄う傾向にある。

 電波オークションは基本的に移動通信体技術と高周波制御技術の発達によりここ数十年で実用化が進み利用が大いに進んだGHz帯と、情報圧縮技術の発展により実用化されたディジタル放送により帯域圧縮が進んだ結果、従来アナログTV放送及びアナログ移動通信体等を中心に使用されていた帯域のうち、特に700~800MHz帯を中心とした周波数帯の再整理により空いた帯域について行われることが多い。なお、先進主要国の大半において地上放送を中心とした電波による既存のテレビ放送は視聴率的に飽和状態にあることに加え、視聴者のニーズの多様化や個別化が進んだ結果、視聴率(利用率)は有料放送主体の多チャンネル化されたケーブルテレビや、インターネット技術を用いた様々なノンリニア配信形態に移行しつつある状況である。また、近年拡大の一途を辿る移動通信体の電波需要の増大により、これらにより用いられる電波帯域は慢性的に逼迫しており、多くの国々の電波使用帯域利用計画では新規電波オークションの対象が放送局等の報道機関に対してのものではなく、原則移動通信体に対するサービスを行う通信事業者に対してのものである。なお、これらのオークションでは人口・地域等のカバレッジ率に対する履行義務や、サービス実施の期日履行義務を伴うものも多いため、諸条件により通信事業者が辞退する場合や入札を見送る場合も少なくない。そのため、必ずしもオークションが成立するとは限らず、中進国を中心にオークションの未落札・未成立・延期等の失敗事例も散見される状況である。

 また、オークション実施諸国の法制度その他により様々ではあるものの、多くの場合オークションで売却される電波帯はあくまで占有使用権利であり、使用免許を伴う許認可的性格を持つものである。従って、国情や市場の状況、技術発展等を勘案し、オークションの際に帯域使用権利に更新可能ではあるものの予め5年~10年程度の使用期限が設定されている場合や、新たに周波数帯の整理や見直し等が行われる場合があり、その場合は免許が更新されず改めて電波オークションが行われる場合があることが予告されている場合もある。

 なお、オークションにより通信市場の適正化が図られる反面、有力事業者による寡占化が進む可能性があることや、カバレッジ義務やサービス提供義務等を履行できない業者等の参入によるサービス低下や通信環境の後退等の悪影響も否定できないため、入札に資本金等の経済的な要因や技術力等の一定の条件を設けている場合や、一定地域内での単一事業者の支配率に上限を設け小規模事業者に対する優遇措置を設けている等の処置が行われるケースもみられる。

 なお、落札額等の日本円換算についてはオークション当時のレートではなく、調査時点(2018年)での平均的なレートでの換算金額としている点で注意が必要である。

 

 参考資料:諸外国のオークション制度(周波数オークションに関する懇談会 事務局)

 http://www.soumu.go.jp/main_content/000121936.pdf

 

世界主要国の通信放送等に関する調査報告書 5