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世界主要国の電気通信に関する詳細情報 31

31.スイス

 

1.報道内容に対する監視機構と罰則規定等について

 スイス連邦憲法(Bundesverfassungder Schweizerischen Eidgenossenschaft (vom 18. April  1999 (Stand am 1. Januar 2018))) 第93条によりラジオ及びテレビは教育と文化の発展及び娯楽、自由な意見の主張とその多様性に貢献すると共に、放送内容の自律と独立性が保障されている。また、同法同条に報道について特別な配慮が必要であると共に、番組についての苦情等は独立した公訴機関に提出可能であることが定められている。

 報道機関に関する管理運営の詳細については、ラジオとテレビに関する連邦法(784.40  Bundesgesetz  über Radio und Fernsehen (RTVG)) に定められている。また、具体的な管理については、スイス連邦憲法第93条に定める公訴機関であり、ラジオとテレビに関する連邦法第四条に示す執行メンバーにより運営されるラジオ・テレビ独立公訴機関(Unabhängige  Beschwerdeinstanz  für Radio und Fernsehen UBI) により、放送内容に関する苦情等の審議を行うことが定められている。

 直接的な規制や監督は、連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(Eidgenössisches  Departement  für Umwelt,Verkehr,Energie und Kommunikation UVEK (Federal Department of the  Environment , Transport,Energy  and Communications DETEC en)) により行われる。

 ラジオとテレビに関する連邦法(RTVG) 第3条により、憲法で保障されているラジオとテレビの国家からの独立が規定され、番組編成においては放送免許を有するか、事前に連邦通信委員会(Bundesamt  für Kommunikation BAKOM (Federal Office of Communications OFCOM en))に通知する必要があるほか、同4条によりラジオ番組及びテレビ番組の全ての放送は人間の尊厳を尊重し、差別的であってはならず、人種的憎しみの増進や公衆道徳を棄損する内容や暴力の賞賛を控える必要がある。また、放送局の自律性も定義されており、同第6条により、更に連邦法による別段の定めがない限り放送局は、連邦、州、または地方自治体の指示に従う必要はないと定められている。

 報道番組では一般市民の自己の意見形成を可能とするために事実を適切な方法で提示すると共に、事実とコメントの差異が認識可能である必要がある番組は憲法及び国際法上のスイスの義務履行及び連邦議会等の運営を妨げるものであってはならない。また、同第5条により、番組提供者は、未成年者の身体的、精神的、道徳的、社会的発達を阻害する番組を未成年者が視聴しないよう配慮する必要がある。

 自国コンテンツの優遇政策として、番組は、放送時間の過半をスイス及び欧州作品とするほか、テレビ放送局はスイス映画の購入や制作等に総収入の4%以上を費やすか、最大4%の補助金を支払う必要があるほか、視聴覚障碍者に対する適切な配慮と、地域放送局は主な情報番組に字幕を付ける必要がある。

 広告に関しては、同第10条により煙草製品と1932年アルコール法に定める酒類、宗教広告、政党及び立候補者、国民投票の対象者等の広告は禁止されている。また、医薬品に関する広告も、医薬品及び医療製品の関する法律第31条及び同第32条を持たすもののみが許可されている。更に、誤解を招く表現や不公平な内容及び健康の按損、環境の悪化、個人の安全を危険にさらすような行動を奨励する内容の広告も禁止されているほか、ラジオとテレビに関する連邦法(RTVG)第13条により未成年向けの広告は、未成年の経験不足の悪用や、身体・精神的発達を損なうものであってはならない。また、同第11条により広告は番組から独立し、基本的に放送時間の20%を超えてはならないほか、スイス放送協会(SRG  SSR: (Swiss Broadcasting Corporation SBC en)) のラジオ放送では広告が禁止されている。

 番組のスポンサーは、同第12条により番組の編集の独立性に影響を与えてはならないほか、番組の最初または最後にスポンサー名を表示する必要がある。また、放送局は同第15条により広告及びスポンサーシップによる総収入を連邦通信局(BAKOM)に報告する義務を負う

 同第17条により、放送事業者はラジオ・テレビ独立控訴機関(UBI) の活動に必要とする情報を提供すると共に、同第74条及び75条に示される多様性に関する脅威についての報告を行う義務を有する。

 同第18条により年次報告書と次年度方針を連邦通信局(BAKOM)に提出する義務を負う。

 情報提供の義務に従い、同第20条により放送事業者は全ての番組を記録すると共に、なくとも4ヶ月の問番組の記録と関連した資料を保存する必要があると共に、オンブズマンまたはラジオ・テレビ独立控訴機関(UBI) に苦情が提起された場合には、その手続きの終了まですべての記録や資料を保管する義務を負う

 苦情の申し立ては同第92条により保障されており、同第93条により訴状提出語40日以内に当事者に対し報告する必要がある

 なお、放送事業者による違反は連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)により、同第89条に従い、違反再発を防ぐ処置を取らせるほか、放送免許の一時停止や撤回等を行うことができる。また、同第90条により比較的軽微な違反に対し最大10,000CHF(約120万円)、深刻な違反に対し直近3年間の年間売上高の最大10%の罰金を科すことができるほか、同第101条の規定により最大100,000CHF(約1200万円)の罰金が科せられる。また、同第50条の規定によっても放送免許の制限や中断、撤回がなされる場合がある。

 

 スイス憲法(Bundesverfassungder Schweizerischen Eidgenossenschaft (vom 18.A pril 1999 (Stand am 1. Januar 2018))) の詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.admin.ch/opc/de/classified-compilation/19995395/index.html

 

 ラジオとテレビに関する連邦法784.40(784.40 Bundesgesetz  über Radio und Fernsehen (RTVG))の詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.admin.ch/opc/de/classified-compilation/20001794/index.html#a4

 

・スイス放送協会(SRGSSR)に課せられた義務や規定について

 スイス放送協会(SRGSSR)は、運営費用の70%を受信料で賄い、残りの30%をスポンサー及び広告収入で、賄っているスイス公営放送である。スイス放送協会(SRGSSR)は、他のスイスの民開放送局と異なり、ラジオとテレビに関する連邦法(RTVG)第23条~第37条に特別の義務や規定が設けられている。スイス放送協会(SRGSSR) による放送では、同第24条で憲法上の任務を遂行するため、ドイツ語・フランス語・イタリア語の3つの公用語(※スイスの公用車はごれら3言語に加えロマンシュ語を含めた4言語であるが、同第24条の定めにはロマンシュ語は含まれていない)によりラジオ及びテレビ放送の提供と、国の特性に合わせ、地域・言語・コミュニティー・文化・社会集団の理解と結束及び交流を促進すると共に、スイスの存在意義と海外での理解を促進が義務付けられ、政治的・経済的・社会的状況に対し、包括的・多様的かっ適切な情報を通じ公衆の意見の自由な表現と、スイス文学・音楽・映画等の制作を中心にスイスの文化振興と文化的価値の強化、並びに視聴覚的番組の定期放送による教育及び娯楽の提供に貢献することが定められている

 これらを実現するため、少なくとも1つのラジオ及びテレビ番組がそれぞれの言語領域に合わせスイス全土に提供されている必要があることが同第30条に定められている。

 このスイス放送協会(SRGSSR)は、同第31条の定めにより国家からの自主性・独立性と、社会的・経済的・政治的グループからの独立が保障されているが、スイス放送協会(SRGSSR)自体は連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)による承認が必要である。

 なお、スイス放送協会(SRGSSR)及び関連企業は、他のメディア企業に影響を与える可能性のある放送免許外の活動について事前に通知する必要があるほか、これらの活動がスイス放送協会(SRGSSR)に課せられた義務の履行を損なう場合、及び他のメディア企業に著しい影響を与える場合、連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK) は、その活動内容、資金調達、組織等に条件を課す場合や、活動そのものを禁止する場合がある。

 

 

 

2. クロスメディアオーナーシップ等の報道機関の一定地域における情報提供の占有や支配に関する各種規制について

 スイス連邦憲法第94条に定められている経済的自由の原則により、独占禁止法に抵触しない限りはメディア所有の自由が認められているが、同第97条に定められている消費者保護の観点から制限が掛かる場合がある。具体的には、ラジオとテレビに関する連邦第44条3の規定により、企業は最大2つのテレビライセンスと2つのラジオライセンスを有することができるが、同第17条の情報提供義務と多様性の脅威に関する検討に基づき、1つ以上のメディア関連市場で支配的な地位を築いている場合や、同第74条及び75条の規定により、放送局が関連市場での支配的な地位を乱用した場合、或いはラジオ・テレビ等の複数のメディア関連市場で支配的な状況となり、それにより多様性に対する脅威が認められる場合は、競争委員会により独占禁止法が適用される場合がある。なお、放送免許の譲渡については、事前に連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK) に報告し、承認を受ける必要があることが、同第48条に定められている。

 

・外資規制等について

 ラジオとテレビに関する連邦法(RTVG)第44条の規定にある一般的ライセンス要件により、ライセンスはスイスの自然人の住居者及びスイスで設立された法人に限られている。但し、国際条約等で定められている相互主義の要件を満たしている場合に限り外国資本が認められる

 

 

3. 電波オークション制度について

 周波数管理と無線免許に関する規制条例784.102.1 (784.102.1 Verordnung  über Frequenzmanagement und Funkkonzessionen FKV)第3条により、連邦通信局(BAKOM)により策定された周波数割り当て計画に基づき、連邦通信委員会(Eidgenössische Kommunikationskommission Com Com)により同第20条"-'24条定められた手続きに則り電波オークションが行われている。

 

・オークション等実施例

・2012年に実施された800MHz帯、900MHz帯、1.8GHz帯、2.1GHz帯、2.6GHz帯の2028年までの免許貸与の電波オークションは、2.1GHzのTDD(Time Division Duplex)及び2.6GHz帯のTDDの一部が未落札で、あったものの、3事業者により総額996,268,000CHF(約1200億円)で落札された。

 

 周波数管理と無線免許に関する規制条例784.102.1(784.102.1 FKV)の詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.admin.ch/opc/de/classified-compilation/20063220/index.html

 

 2012年に実施された800MHz帯、900MHz帯、1.8GHz帯、2.1GHz帯、2.6GHz帯のオークションの詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.bakom.admin.ch/bakom/de/home/frequenzen-antennen/neue-mobilfunkfrequenzen-fuer-orange-sunrise-und-swisscom.html

 

 

4. 電波使用料等について

 ラジオとテレビに関する連邦法(RTVG)第22条を根拠として、放送事業者は毎年放送免許料を支払う。免許料は、同第77条に定められるラジオ及びテレビ分野の研究プロジェクト(第や同第58条に定められる新しい放送技術の研究促進を中心に使用される。なお、放送免許料は広告およびスポンサーシップ収入の1%を超えはい範囲であることが定められており、金額は連邦理事会により決定される。

 電気通信全般における具体的な電波使用料は、電気通信分野における料金規制(電気通信料法)(Verordnung über die Gebühren im Fernrneldebereich (Femmeldegebührenverordnung,GebV - FMG))により使用目的別にライセンス料金が定められている。

 

無線ブロードバンド接続:年間0.018CHF(約2円) の基本周波数価格と、帯域毎に設定された周波数領域係数(高周波数帯ほど、係数が小さし、) 、帯域幅25KHz毎に加算される帯域幅係数、全国サービスの場合は係数42000,地域サービスの場合はサービ、スエリア面積及び人口分布(人口密度が高いほど係数が大きい) により定められた係数により算出される。

固定衛星ラジオ:年間2CHF(約240円)の基本周波数価格と周波数領域係数(10~20GHz帯が大きく、それより高周波数帯及び低周波数帯は小さい)、帯域幅25KHz毎に加算される帯域幅係数、衛星の軌道により定まるスペース係数(静止軌道が小さく、非静止軌道が高い)により算出される。

移動衛星ラジオ:年間15CHF(約1800円)の基本周波数価格と周波数領域係数(1~3GHz帯が最も高く、次いで15~40GHz帯、lGHz未満、3~15GHz帯、40GHz以上の順で小さい)、帯域幅25KHz毎に加算される帯域幅係数、帯域幅の共有状態で定まる周波数クラス係数(共有される場合は小さい)により算出される。

移動体無線:年間156CHF (約19000円)の基本周波数価格と周波数領域係数(3GHz未満が大きく、3GHz以上は小さい)帯域幅12.5KHz毎に加算される帯域幅係数、全国・地域別に使用頻度により定まるスペース係数(全国>地域、使用デバイス数が多いほど大きい)により算出される。

VHF/UHF周波数帯のディジタル片方向データ通信:年間5200CHF(約62万円)の基本周波数価格と、帯域幅山田z毎に加算される帯域幅係数、地理的要因で定義された空間係数算出される。

HF/LF周波数帯(短波及び長波):帯域幅により年間1KHz幅未満の150CHF(約18000円)から8MHz以上の1680CHF (約20万円)が課せられる。

 

 電気通信分野における料金規制( 電気通信料法(Verordnung über die Gebühren im Fernrneldebereich (Femmeldegebührenverordnung,GebV - FMG))の詳細は以下のWebサイトを参照

 https://www.admin.ch/opc/de/classified-compilationl20072116/index.html

 

 

5. その他資料等

・監査機関等

 メディア全般と情報電気通信の管理全般を連邦通信局(BAKOM) が行い、主に電気通信の技術的な問題を中心とした管理規制を連邦通信委員会(Com Com) が行い、通信を中心とした管理を連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK) が行っている。

 

(※リンク先が調査時(2017~2018年)から変更になっている場合は、各機関のHPルートに接続します)

スイスには4つの公用語(ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語)があり、公式名称や略称はそれぞれの言語による記述や、それぞれの言語の頭文字を用いたものがあり、更に国際的には英語名称や英語略称が用いられる場合がある為、同じ機関や組織に対し複数の略称が用いられる場合がある。

世界主要国の通信放送等に関する調査報告書 40